その28 集団脳 人間の進歩の力 高度な技術革新には『大きな集団』が必要不可欠
集団脳 人間の進歩の力 高度な技術革新には『大きな集団』が必要不可欠
参考 ヒューマン・エイジ 人間の時代 プロローグ さらなる繁栄か破滅か
https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/blog/bl/pneAjJR3gn/bp/p8Gj5rMD9Q/
参考情報によれば
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ネアンデルタール人は、私たちホモ・サピエンスと同じ祖先(ホモ・エレクトス)から進化しながら、
およそ4万年前に姿を消した「別の人類」です。なぜ私たちだけが生き残り、進歩を遂げることができたのか?
ホモ・サピエンスとネアンデルタール人の頭蓋骨を比べると、脳の大きさはほぼ同じ。
知能のレベルも同程度だったと考えられます。言葉を使う能力や、火を起こす能力にも大きな違いはないとみられます。
両者を分けたものは何だったのか?
研究者たちが目をつけたのが、「道具の違い」です。
ネアンデルタール人の石器はどれもよく似た形で、狩りにも料理にも同じような道具を使っていました。
一方、ホモ・サピエンスの道具は、用途に合わせて大きさも形も多種多様に進歩していたのです。
「ネアンデルタール人は25万年もの間、ほとんど変化のない石器を使い続けました。
一方、私たちの祖先は驚くほど次々と新しい道具を生み出し、さらに、
こうした道具を使い始めたころから20万年で現代に至ります。とてつもない技術革新の速さです」
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なぜ私たちだけが、技術革新を成し遂げられたのか?
ハーバード大学 人類進化生物学 ジョセフ・ヘンリック 教授
「ホモ・サピエンスと同じくらい大きな脳を持ちながら、ネアンデルタール人が技術革新を起こせなかった
その理由は『集団の大きさ』にあったと考えられます」
世界中の狩猟採集民族を研究してきた、ヘンリックさんは、「集団の大きさ」と「技術革新」の間に、
「ある法則」が存在することを発見しました。
その法則を示す、典型的な一例です。1900年代初頭の調査から、
太平洋の島々で暮らす民族の「人口の規模」と、漁に使っていた「道具の種類」を比較したところ、
「集団が大きくなるにつれて、生み出す道具の種類が増えていた」のです(下のグラフ)。
「同じ法則が、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスにも当てはまる」とヘンリックさんは言います。
石器が変化しなかったネアンデルタール人は、家族単位の小集団で暮らしていたと考えられるのに対し、
数々の道具を生み出したホモ・サピエンスは、血縁を越えて150人規模の大集団を築いていたとみられるのです。
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ジョセフ・ヘンリック 教授
「集団が大きければ大きいほど、技術革新が加速しやすくなる。
これこそが、私が『集団脳』と呼ぶ、人間の進歩の力です」
ヘンリックさんの考えはこうです。
集団内で、ある技術について情報をやりとりするうちに、一定の確率で新たなアイデアを思いつく人が出現。
新しい道具が、世代を超えて受け継がれていきます。
しかし小さな集団では、技術に詳しい人がいなくなると、やがて古い道具に逆戻りしてしまいます。
それが大きな集団になると、情報のやりとりが盛んになることで、新たなアイデアを思いつく人が増加。
そう簡単には技術が逆戻りせず、確実に受け継がれ、高度になっていく。これが「集団脳」です。
「私たち人間が次々と技術革新を生み出せるのは、
個々人が賢いわけでも、一握りの偉大な天才のおかげでもありません。
高度な技術革新には『大きな集団』が必要不可欠なのです」
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さらに人間は、集団脳をますます拡大していくために重要な「コミュニケーション技術」を発明します。
およそ5500年前、シュメール文明で生み出された人類最初の「文字」。
知識や知恵を多くの人が共有し、時を超えて伝承できるようになりました。
15世紀の神聖ローマ帝国では「活版印刷技術」が情報の拡散を急加速させ、
宗教改革やルネサンスを後押しして、近代文明を花開かせていきます。
そして現代。私たちは“究極のコミュニケーション技術”を手に入れました。インターネットです。
世界中44億人(2022年現在)の利用者が自在につながる巨大な集団脳によって、
さまざまな技術革新のスピードが一気に加速しました。
そしてついに、「出・地球」時代への扉を開く高度な技術をも生み出したのです。